【音源紹介】 Virtual Dream / Svccy

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-41-43

a0305227687_16
イタリア出身のvaporwave系アーティストの7曲入りアルバム。facebookSoundcloudがともに12月19日の開設になっているので、おそらくこれが最初の音源と思われる。vaporwaveっぽいのはサンプリングの音源チョイスだけで、内容はアンビエントやチルウェイヴの方面に傾いたドリーミーな音。future funkっぽさもそこまで高くない。しかしながらそういう方面の音とも共通する陶酔感・美しさは十分に持ち合わせており、聴いていて心地よい1枚。「ↁigital Fↂrest」などクリスチャン・フェネスを彷彿とさせる瞬間もある。こちらVaporwave Nights イタリア初の蒸気イベントというグループ(?)が主催しているイタリア中部地震のチャリティーコンピにも参加している。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-41-43

【音源紹介】 Kidz Squad / Kinder Garden

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43

a1445146424_16

イタリアのオルタナ系ファストコアバンドのアルバム。タグにはファストコアやパワーバイオレンスといった単語が並ぶが、音的にはスケートパンクやファストメロディックといった感じの音で、ジャケット通りかなりふざけた内容。コメディ調のSE(哀歌?)から幕を開け、バンド名通り本当に幼稚園に通っていそうなハイトーンのボーカルが所狭しとがなりまくる。メロディアスで良い曲も多く、本人たちのおそらくなんちゃってでやっているであろう”ファストコア感”みたいなのを抜けば売れそうな音。タグにはグラインドコアという単語も混ざっているが絶対にその要素だけはどこにもないと思う。
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43

「Various Times」対訳

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32

Alright we’re going to go back
to 1940
No money
And I live in Berlin
I think I’ll join up
Become a camp guard
No war for me
An old Jew’s face dripping red

I hate the prisoners
I hate the officers
They’ve no fight
I think I’ll join
The red rose
Leave Belsen
I’ll go to Switzerland

A human resistor
Don’t think, ask him

Present :
I don’t like them
said Ian
in his black-out threat
I think I’ll drop out
Become a no-man
And live my rules
But I’m the sort that gets
out of the bath with a dirty face

Everyone I meet’s the same now
No brains or thought
A good case for the systems we like – we get

Human race
Various times
Don’t think, ask him

Future:
1980
Black windows
And smokey holes
My head is full of lead
And the beer is so weak
Since they got rid of time around here

Dr. Doom fresh from Salem
And the witch trials
The Lathe of Heaven
Time mistaken
Three places at once

Human race
Don’t think, ask him

Ask him
Ask him

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32

オールライト
それじゃあみんなで1940年に戻ってみよう
金はなく
俺はベルリンに住んでいる
俺は収容所のガードマンにでもなろうかなと思っている
戦争なんて他人事
年老いたユダヤ人の血まみれの顔

俺は収容者を憎む
俺は士官どもを憎む
やつらは戦わない
俺は参加しようと思う
赤い薔薇
ベルゲン収容所を離れ
俺はスイスに向かう

人間の抵抗
考えるな、彼に従え

現在:
「僕は彼らが好きじゃない」
イアンが言った
電気を止められることを恐れながら
俺はドロップアウトしようかなと思う
何者でもない人間になる
そして自分のルールに従って生きる
でも俺は顔も洗わず風呂から出る人間だ
俺が会うやつはみんな似通っている
頭が空っぽで何も考えていない
それは俺たちの好きな−手に入れた−システムにとっては都合のいいこと

人類
様々な時代
考えるな、彼に従え
未来:
1980年
黒塗りの窓
胸焼け
頭の中は鉛でいっぱい
くそまずいビール
彼らがこのあたりから時間を奪って以来ずっと

Dr.Doom
セイラムから産地直送
魔女裁判
天のろくろ
時間の失敗
3つの場所の並在
人類

思考を止めろ、彼に従え
彼に従え
彼に従え

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32

「Various Times」はThe Fallの2ndシングル(Bingo Master〜をEPとする場合は1stシングル)で、「It’s A New Thing」との両A面の扱いになっています。歌詞にある「Said Ian」のIanはエコバニのイアン・マッカロクのことで、なんとこの時期イアン・マッカロクはあのジュリアン・コープと一緒にThe Fallのローディーとして働いていたのだとか。
今回訳に挑戦するまでMark E Smithがこんなにナチスのこととかに関心があったとは知らなかったのですが、曲はナチス的なものに惹かれていく人のことを風刺を込めて過去(ナチス当時)・現在・未来の3つの視点から歌ったもので、結局いつの時代もバカばっかりなのだから、いつの時代もナチスが現れる恐れはある、みたいな感じの曲になっています。
Dr.Doomはアメコミに登場するキャラクター。セイラムは魔女裁判で有名なアメリカの田舎町です。天のろくろはル・グウィンのSF小説。
歌詞は現在まで面々と続くワンフレーズの呪文みたいな言葉を積み重ねていくスタイルが早くも出現している感じで引き込まれます。

【音源紹介】 Niku ni ayamari , Yasai ni ayamaru / The Naked PygoscelisAdeliae Kindergarten

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43
a3159367751_16
二郎系(?)ゴアグラインドバンドの4曲入EP。ネタ系と言ってしまえばそれまでだが、何気にデス声が豚の鳴き声みたいになっていて面白い。豚ということでAgathoclesを連想したが、2曲目のタイトルが「Vegan buchikorosu」なのでヴィーガン系というわけでもなさそう。食料(ニク)としての豚を崇めつつ、お残ししたり食べませんとか言ってカッコつけてる奴はマジ許せん!という感じだろうか。しかしBandcampにアップされている別の曲のタイトルは「Gyudon (nikunashi ver.)」で、特に豚をフィーチャーしてるわけでもなさそうなのが謎。バンド名は”裸のアデリーペンギン幼稚園”でめちゃくちゃかわいい。二郎系と動物が好きなやさしい方なのだろうか?タイトルは全マシを食いきれなかった人の心の叫びにも感じる。
※追記 こちらのネットレーベルされてる方の一人ユニットの模様。
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43

【音源紹介】INITIATION PACKAGE / PEARL CITY HOTEL

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43
a3963588901_16

フランスのvaporwaveアーティストの新作。パーティー的と呼べばいいのか、アメリカなど本場(?)のアンビエント寄りのインドア志向のvaporwaveと違い、よりハウス寄りというか、パーティーで流れていてもおかしくない陽気なノリを感じるダンスミュージックとなっている。6など真っ当?なvaporwave曲もあるが、3は完全にダブで、全体的にアッパーな外向きのノリを感じる。それでもちゃんとvaporwaveになっているところがおもしろい。アーティストの志向というよりはフランスのお国柄なのかもしれない。
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43

【音源紹介】 SKY LOBBY / I am Adam, of Eternia

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-41-43

cover

I am Adam, of EterniaはUKのvaporwave/future funkアーティストで、『SKY LOBBY』はアメリカのFANTASY☆DELUXEからリリースされた3作目のアルバム。これまでの音源の中では最も長い作品となっており、”The Sky Lobby”と名付けられた高層タワーの最上階を舞台に、聴き手がそこで町の夜景を眺めながらリラックスする空間を演出する、というコンセプトアルバムとなっている。「夜」や「高層タワーの最上階」といったコンセプトに引っ張られたのか、前半は曲のトーンに似たようなものが続いてしまい、やや退屈に感じられるが、中盤から後半にかけてはその退屈さが嘘だったように素晴らしい展開が続き、耳に心地よい余韻が残る。コンセプトアルバムとして完全に成功しているとは言えないかもしれないが、十二分に聴き応えのある佳作。vaporwaveでコンセプトアルバムというのも少し珍しいように思う。

I am Adam, of Eterniaは前作も大変素晴らしい作品なので、この作品が気になった方は是非前作も聴いてみてください。
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-41-43

※前作:

【音源紹介】 CIDERVIOLENCE / FETUS CHRIST, HOOKED ON CHRIST

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-41-43

cover

イギリス出身のファストコア/パワーヴァイオレンス系バンド2組によるスプリット盤。どちらのバンドも名前からして反キリストを全面に押し出しているが、音はブラストビートを交えた無骨なハードコアといった印象で、曲名もそんな感じという以外は特にこれといった特徴は見られない。この系統のバンドはみんなこういう名前を名乗る、といった伝統があるのかもしれないが、まだまだこのジャンルを聴き始めて日が浅いのでよくわからず。クラストコアはCrassとかアナーコパンクの延長から始まったという話を聞いたことがあるので、もしかするとその伝統でこういった名前をつけているのかもしれない。音源は双方とも非常に音質が悪く、ほとんどアメリカのどこぞの田舎のハードコアバンドが無料で出しているスカスカのデモ音源のようなのだが、このスプリット盤を気に入ったのはそんな録音でもどちらのバンドからもそれぞれ大変熱気と勢いが伝わって来るということ。もしかするとこうやって音質の悪い音源を出すということも文化なのかもしれないと思えるほど、音質の悪さも気にならない。特にFetus Christは他の音源も一通り聴いてみたいと思った。
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-41-43

【宣伝】12/10発売 『新生総合マンガ誌 キッチュ』ワイズ出版創刊号に漫画が載っています。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43

cxjdj6wviaahwey

http://www.wides-web.com/

http://studiokitsch.info/honshi_07.html

12/10発売、ワイズ出版『新生総合マンガ誌 キッチュ』創刊号に漫画を掲載していただきました。
普段描いているゆるキャラの漫画で、以前関西コミティアで発表したものに加筆・修正したものになります。全国の書店及びamazon模索舎storeタコシェ様などの通販サイトからもお買い求めいただけます。よろしくお願いします。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43

[2016年12月/A5/421頁/¥1,200+96]
編=呉塵罡
発行=ワイズ出版

【タイトル題字】 平田弘史
【表紙イラスト】 ムライ
【表紙・本文デザイン、編集協力】 神崎夢現

【マンガ作品】
めいこちゃんは上の空 |さそうあきら
彼の友達 |スケラッコ
time capsule? |あらむきちの
猫村の憂鬱 |もぷ子
令嬢亜美のコレクション |ひらまつつとむ
果肉の娘 |阿部洋一
トリップ |夏目ジャネ子
高橋君のオトメゴコロ |シゲケンジ
仕事 |平口広美
チワワにぶちこめ!! |石川次郎
創世記第8~9章 |ひさうちみちお
コーヒージョーンズの冒険 |榎屋克優
~一種だけの星~ |青のりしめじ
さよならの皿 |田中圭一
セブンスターガール |さくら亜子
本に囲まれて |アニュウリズム
劇画シネマデリシャス |顔々
深界潜水夫 |榛村駒鳥
徒然 |ほし埜
BEYOUD THE UNIVERSE |わんわん
ドロシー・オーバードーズ |ムクロジ

【特別企画・インタビュー・対談】
「ガロ」の時代「“ガロ”のまんが道・元副編集長白取千夏雄編」
取材・構成:呉 塵罡(ゴジンカン) 構成協力:佐藤勇馬 特別協力:おおかみ書房

台湾近代漫画の真相「傑利小子(キッド・ジェリー)と近代台湾マンガの歩み」
聞き手・構成:呉塵罡(ゴジンカン)

京都カウンターカルチャー「特別鼎談:甲斐扶佐義×佐藤守弘×呉塵罡」
聞き手・構成:呉塵罡(ゴジンカン) 構成協力:佐藤守弘

【特集】
夜をかける少女 |都築響一
大きな中国、小さな絵本ー連環画の魅力について |加部勇一郎
京都の死にたい場所 |吉村智樹
自主映画最前線2016 |浅尾典彦
世界最大の廃墟 チェルノブイリ |廃墟探索部(稲葉渉・成宮澪)

【小説】
禁じられた遊び |紺野まこと(イラスト:モツ子)
オレンジ ~Motojiro Kajiiに捧ぐ~ |土居豊(イラスト:ムライ)
国際探偵 ― チェイス・オブ・ザ・ワールド |關眼陣梧(イラスト:ヒノデエイジュン)
来訪者 |広瀬崇光(イラスト:本みりん)

Who Is Juan Mutant? 〜Juan Mutantとは誰なのか?〜

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32

611c8rdg1vl-_ss500

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32

先日、Apple Musicでアメリカのノイズバンド、Whitehouseの音源を探している時に、「White House」という名義で、何やら膨大な量の音源をリリースしているアーティストを見つけました。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-13-14-09-32

一見たかだかアルバム10枚程度に見えますが、問題はそのボリュームです。まず左上のアルバム、『Bunker』は30曲入りで収録時間15時間(!)49分。いきなりわけがわかりません。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-13-14-11-32

さらに驚いたのが『Exile Express』でこちらはなんと116曲入って収録時間37時間55分(!!)

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-13-14-14-56

なんだこれは!?と思い、さっそくこの「White House」について調べてみました。ジャケットからしてノイズのWhitehouseっぽいですが、よく見ると名前が微妙に違うし(WhiteとHouseの間にスペースが入っている)、WhitehouseのDiscogsを開いてみてもどこにも載っていません。リリース元の”Mutant Records”も聞いたことがない名前です。途方に暮れながらもあちこちネットの海を彷徨い、しばらくそれを繰り返しているうちに、この音源をリリースしているのが、Juan Mutantというミュージシャンであることがわかりました。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43

113005300-juan-mutant-photo

Juan Mutant、本名Juan Rogelio Camilionはアルゼンチン出身のミュージシャンで、1969年8月22日生まれ。かつてはドイツのベルリンでDJとして活動したり、90年代初頭から中頃にかけてはDeliriant Mutantというバンドを組んで活動をしていた時期もあったようですが、何らかの理由で95年に本国に強制送還されてしまい、以降はブエノスアイレスに在住。そこで2004年頃からCD Babyを使って音源のダウンロード販売を始め、そのまま現在に至る、という人物。公式HPやSNSのアカウントは存在せず、その正体は謎に包まれています。

これだけ書くと少し不思議な部分はあるものの、何てことはないごく普通の(人生はちょっとしんどそうですが)ミュージシャンといった感じですが、さらにいろいろ調べていくと、どの名義が最初で、どの名義が最新なのかはわかりませんが、Juan Mutant氏は2016年現在、なんと先のWhite Houseだけではなく、CD Babyを通じ全部で36名義359枚のアルバムをリリースしている、ということがわかりました(!)。

衝撃すぎて意味がわからないのですが、それも何十年といったスパンではなく、主に2004年から2013年の間を中心にそれだけの音源をリリースしているのです(!)。これは彼が主要な音源のリリース元としているCD BabyのHPで、juanmutantのアカウント名でリリースされている全音源をチェックした際に表示される枚数で(適当に数えたので数は間違っているかもしれませんが)、これ以上の作品がある可能性もあります。
たった数年の間にこれだけの名義を使い回し、鬼のように音源をリリースすることだけでもすごいのに、さらにこれらのアルバムを1つ1つ見ていくと、そのほとんどがWhite House同様、収録曲数50曲以上、総再生時間9時間だの15時間だのといったマグナム級のボリュームを持っているのです。収録曲が200曲を超えているアルバムもありますし、9曲しか入っていないのに再生時間は10時間近いアルバムもあったりします。いくらなんでもストロングスタイルすぎます。

そこで36の名義をチェックし、いくつか主要と思われるものをまとめてみました。音源はApple MusicやSpotifyで聴けるようになっているものも多いので、気になる方は是非チェックしてみてください。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32
まずは本名であるJuan Rogelio Camilion。Apple Musicで検索すると、以下の4つのアルバムが聴けるようになっています(うちAim2とAim3がCD Babyでも販売中)。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-13-14-51-55

そのうち『Aim 2』はリリースの日付が89年7月20日になっており、もしこの通りなら一番古い音源の1つかもしれません。しかしながらこのアルバムも50曲で15時間ある大作になっており、このままリリースされた可能性は低いと思います。単純に作った日付なのでしょう。『Aim 3』も1曲目から40分近いアシッド・ハウス風の曲が続く全19時間の大作で、まだ数曲しか聴けていませんが、なかなか聴き応えがあるアルバムです。なお2の時期Juan氏はKen Mutantというドイツ人と壁崩壊後のベルリンでDJをしていたと言われています。(その後Jasper VosJanos Bartaというメンバーを交えDeliriant Mutantを結成。)
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32

そのバンド、Deliriant Mutant名義でもいくつかの作品がリリースされており、Apple Musicでは以下の4枚を聴くことができるようになっています。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-13-14-56-22

しかしながらリリース日はいずれも2009年など最近のものになっており、『Live』を聴いてみましたが、1曲目こそバンドで録音したレゲエ・スカっぽい曲を延々ループさせている感じの曲で、そこはかとなくバンドらしさを感じるものの、残りの曲は全てディストーションをかけたエレキギターを一人で弾き倒している演奏をただ録音しただけ、といったテイストのものが延々続き、おそらくバンドの録音ではなく、そのマテリアルを使った可能性はあるものの、完全な一人制作の音源だと思われます。CD Babyではこのほかに『Zen Deliriant Mutant』というCD-R限定の作品を購入することもできますが、こちらは180曲入っていて全曲収録時間が0分0秒というかなり人をおちょくった内容で(サンプルを聴けないだけで中身はちゃんと入ってるのかも)、もはやバンドでもなんでもありません。Amazonでは『Kash the System』『The End of Deliriant Mutant』という上記2サイトにはない2枚のアルバムを購入できますが、いずれも2000年代以降にリリースされたもので、編集盤の可能性はあるものの、バンドの音源かどうかまではわかりませんでした。もしかするとバンドとして正式に録音されたアルバムはないのかもしれません。(※追記 Nadja Pagana Kreativ System名義のアルバム『Follow the Dolar』がバンドDeliriant Mutant時代のコンピレーションとのこと。)

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32

次はJuan Mutant名義。一見これが最もスタンダードな名義に思われ、実際リリース量もApple Musicでは38枚、CDBabyで37枚と膨大なのですが、実はSir Juan Mutantという名義の方がリリース量が多く、なんとCD Babyで159枚の音源をリリースしており、うち38枚をApple Musicでも聴くことができるようになっています。Juan Mutantが本命かと思いきや、どうやらこちらの方が本命だったようです。しかしながら2011年の『La Escollera』という曲を最後にリリースが途絶えています。ちなみに両者の音に明確な違いはないようで、なんとなく途中からSirをつけてみただけのようです。アーティスト・プロフィールには自身の音楽性やアルゼンチンに強制送還された後の暮らしをうかがわせる長めの文章が書かれています。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-13-17-33-37

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32

King Juan MutantはSir Juan Mutantの後を継ぐ名義として生まれたものと思われ、CD Babyで27枚の音源をリリースしています。Apple MusicとAmazonには音源は1つもありませんが(Spotifyでは1枚聴けるみたいです。)、アルバムをいくつか試聴してみたところ、いずれも過去の有名なバンドの曲をそのままコピー&ペーストして曲名を変えただけのPlunderphonicsな作りで、ほとんどロックの曲名当てクイズになっています。 同時期にXl20mutant名義でリリースされた『A』というアルバムも50曲全てがビー◯ルズの曲名当てクイズになっており、音楽を作る気の無さが感じられます。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-13-17-21-14
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32

Nadja Pagana Kreativ System、これもApple Musicでみるとリリース日がめちゃくちゃ(誕生日の4日前)だったりしてアレですが、CD Babyのプロフィール欄に「ベルリンでKen MutantとDJをしていた頃にアイデアが生まれたバンド」だと書かれているので、本名の名義のアルバムと同じく、音源としては一番古いものが含まれているかもしれません。まともなアーティスト・プロフィールが書かれているのはこれとSir Juan Mutantくらいです。音楽的にはいかにも90年代初頭のジャーマンEBMといった感じのインダストリアルな音で、ざっと聴いた中ではかなりまともな方。Apple Music、CDBabyともに2枚の音源を確認できます。(※追記 アルバム『Follow the Dolar』はバンドDeliriant Mutant時代のコンピレーションとのこと。)

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-13-15-29-11

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32
最後にWhite Houseについても少し触れておきたいとおもいます。White Houseは2007年の1年間だけ活動していた名義で、1年間に16枚のアルバムをリリース。この名義の意図などは一切不明ですが、ジャケットには戦争やアメリカの歴史を思わせる写真が使用されていて、かなりUSA的なものを感じます。Apple Musicではうち10枚を聴くことができます。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-14-13-45-09

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-21-14-06-32

以上がJuan Mutantの主要な(と思われる)名義とその作品ですが、ここに書かれていない中でもGrandchester FunkJon FinchJuan Domingo Peronなどの名義がそれぞれ多くの作品をリリースしています。

またJuan Mutantは音源をリリースする際のレーベル名にも様々な名前を使っていて、一見アーティスト名とアルバムを見ただけではそれとわからない作品でも、レーベル名を確認することでJuan Mutantの作品だとわかる、という仕掛けが施されています。これにはJuan Rogelio Camilionとストレートに本名を使っているものから、Rogelioを抜いたJuan Camilion、架空のレーベル名をでっちあげた”Mutant Records”、”Whore Mutant”、”Mandioca Records”といったバリエーションがあります。
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43
51wclvwbn2l-_ss500
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43

Juan Mutant氏の音楽性はキャリア初期(80年代後半から90年代中頃まで)の当時のEBMであったりハウスミュージックであったりに影響を受けた作風から実に多様に変化を繰り返しており、その変化は大まかに概括することも不可能なくらい多岐にわたっていて、ほとんど無限と言って良いと思います。すべてのジャンルをクロスオーバーしているわけではありませんが、つかみどころがないという意味で、アメーバみたいにあらゆるところに触手を伸ばしています。そもそも各アルバムにその時作った音源が入っているかもわからないので、およそ時系列で語ることが不可能に近いミュージシャンです。1つのアルバムの中でさえ統一感がありません。なのでこの人の音、というイメージはあるのですが、それに色がついていないというか、表現することが非常に難しい質感の音楽です。音楽を制作する気持ちがあるかどうかも怪しく、事実ギターを一本弾き倒してるだけの録音が曲として延々垂れ流しになっているだけのアルバムもありますし、近作では他のミュージシャンの曲をタイトルだけ変えてただ垂れ流しているだけの、現代アートのような状態になってしまっているアルバムもあります。アウトサイダー・ミュージックと呼ぶのには個人的に抵抗を感じますが、『Songs in the Key of Z』のVol. 3がもし出るなら、収録されてもおかしくないミュージシャンの一人ではあると思います。彼の精神状態については諸説あって、病気ではないかという説も散見されますが、パラノイアックな面も含めて、個人的には26歳というこれからという若さで活動の場からアルゼンチンに強制送還され、そこで生きることを強いられた孤独なミュージシャンが、世間への鬱憤とか人生への挫折とかそういうものも含めて、半ばやけくそでこういうことをやっているのかな、という気もしないではありません。
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43
41mrio6tibl-_ss500
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43

 

最後に、Juan氏の近況についてですが、実はJuan氏はCD Baby上では2013年に発表したKing Juan Mutant名義の『Escape Quien Pueda』というアルバムを最後に音源の発表をストップしており、現在何の音沙汰もありません。そもそも今生きているかも不明です。上述のようにJuan氏はレーベル名でもアーティト名でも平気で自分と関係のないことを書きつつ(出身国を欺くとか、ジャンルを平気でノイズなのにブルースロックと書くとか、とにかく適当)、ビミョーなところで自分の存在をほのめかす人なので、もし存命なのであれば、CD Baby以外の場所で、このようにわかる人だけにわかるサインを使いながら、どこかで作品を発表し続けている可能性は大いにあると思います。引き続きチェックしていきたいと思います。
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-05-20-38-43