日記

今日は甲子園を見にボーリング場に行きました。

受付のお姉さんに靴のサイズを聞かれて、

「どうしよう、言えない、これは僕の大切な個人情報だ、知られるわけにはいかない。そういえばオウム真理教の死刑囚は13人全員死刑になったけど、林真須美はどうなったんだろう?引っ越しおばさんは?ライフスペース会長は?ビリーズブートキャンプとかやってた黒人は?みんなどこへ行ったんだろう。どこへ行ってしまったんだろう…。」

そんなことを考えて少しセンチメンタルな気分になっていると、一方甲子園では熱中症で全てのモグラと全てネズミと全ての8号門クラブ会員が死んで、”甲子園カレー”を炊いている鍋から、

『アアアアァー』

とサイレンの音が鳴っていました。

しかしボーリング場の僕はそんなこと知る由もありません。

とりあえず靴のサイズを知られるのが絶対嫌だった僕は、お姉さんの話を必死にはぐらかそうと、お腹の痛いふりや、アメリカンバッファローに襲われた人のモノマネをしたりしてその場をやり過ごそうとしました。

するとなんとか「常日頃から下駄を履いてるというより買ったことに満足して下足箱に飾ってそうな気がするからオーケー。」と謎の許可をもらい、レーンに案内されたのですが、次に待っていたのはデカデカとポンド数が書かれたボーリング球でした。

もちろんボーリングの球の重さも知られるわけにはいきません。しかもここはボーリング場、あちこちに監視カメラがしかけてあり、隣で仲間の誕生日パーティーみたいなのをやってるダッサい大学生たちの視線もあります。1個手に取っただけでマイナンバーカードの裏になんと書かれるかたまったものではありません。

僕は慌てて受付のお姉さんのもとに駆け寄り、

「すみません、黄色のマッキーはありますか!?」

と息を切らせて尋ねました。するとお姉さんは何かわかったような目配せをし、咳をしながら最寄りのコンビニへの道を教えてくれたので、僕はお姉さんに一礼してから、ポケットに入っていた、子どもの頃おじいちゃんにもらった気がするカンロ飴を一粒あげました。

そして街へ飛び出した瞬間、街はそれまでと様子を一変していました。そう、そうです。なぜなら今日は甲子園の日だったからです。そうなんです。今日は甲子園の日だったんですよ。日本中で一番警察の人が忙しくなるといわれる日でおなじみの甲子園の日です。街は放水車と火炎、他人のボーリングの球の重さを見ようとするギャング達で溢れ、僕がいこうとしたコンビニは黄色のマッキーを求める人たちでごった返していました。

そして、その時です。

不意に、街中のスピーカーがプツリと放送をやめたかと思うと、くぐもったおじさんの声がゆっくりと流れ始めました。おじさんは最初、ゆっくりとカーペンターズのイエスタデイ・ワンス・モアを歌ったあと、僕たちに向けこう言ったのです。

『今日の…都立うんち小学校と…私立ハイエロファント高校の試合は…中止となりました…繰り返します…今日の…私立なんとかかんとか高校と…都立なんとかかんとか小学校の試合は…ボーリングの球の重さを見ようとする人たちの暴動により…中止となりました…カンロ飴…トクベツ…トクベツ…ヴェルターズ・オリジナル…繰り返します…』

おっさんの放送は3年くらい続きました。

僕は高校生が小学生と卓球で対決するなどあってはならない、と思いました。